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ネットランナー
Netrunner / Wizards of the Coast

一言で言えば‥‥

ハッカー対システムセキュリティ 電脳空間での死闘!

仕掛けられるラン,遭遇するアイス,コードロックを外してさらに深くへ

こんなゲーマーにお薦めしたい

サイバーパンクの雰囲気が大好きな方に

ロジック性の強いカードゲームの一つの頂点としてカードゲームフリークに

プレイ人数 2人
プレイ時間 15−45分(1ディール)
ルール難度 上級トレーディングカードゲーム
デザイナー リチャード ガーフィールド
入手状況 流通在庫のみの状態,まだ入手可能

ネットランナーの設定
ネットランナーの表紙
「ネットランナー」は,近未来の電脳空間での死闘を再現するトレーディングカードゲームです。

プレイヤーの一方は,ザ・コーポレーションと呼ばれる近未来世界で支配的な存在であるハイテクコングロマリットの電脳空間のセキュリティを担っています。

もう一方のプレイヤーは,この電脳空間に進入(ハッキング)して,ザ・コーポレーションのデータや,プロットを盗み出して利益を上げることをなりわいとするネットランナーとなります。

このゲームの直接の原作は,「サイバーパンクRPG(ロールプレイングゲーム)」だそうですが,筆者未見で紹介できません。

とは言え,このゲームは「ニューロマンサー」や「クローム襲撃」といった ウィリアム ギブソン のサイバーパンクSFの雰囲気を見事なまでに再現した傑作ゲームと思います。サイバーパンクRPGそのものは知らなくても,いわゆるサイバーパンクSFを好きなら一見の価値のあるゲームです。

ネットランナーのシステム
ネットランナーのプレイ状況
「ネットランナー」では,ネットランナー側のプレイヤーは,フラッシュグリーンのカードだけを使用し,ザ・コーポレーション側のプレイヤーはライトパープルのカードだけを使用します。

トレーディングカードゲームの常として,プレイヤーは自分のカードコレクションからカードを選び出してデックを構築します。ランナー側とコーポ側では使うカードがまったく違うので,それぞれについて別々に作る必要があります。対戦では,一方がランナーデックを使用し,他方がコーポデックを使用してそれぞれの役割を担ってプレイします。競技対戦では,攻守ところを替えて2戦し,両方の結果を比較して勝敗を決します。

使用するカードが異なるため,プレイも表裏背反した形で行われます。コーポ側は,その秘密プロジェクト(アジェンダ)を進めることで勝利得点(アジェンダポイント)を獲得します。このためには,プロジェクトを手札から場札へとインストールし,さらにアドバンスさせることが必要です。この際にランナーのハッキングを防ぐため,アイスと呼ばれる保安プログラムをその前面にインストールできます。

対してランナー側は,こうしたアイスを破るためのプログラムを自身の場札としてインストールして進入を試みます。この進入の試みを「ラン」と呼びます。

コーポ側のアイスや,その奥に潜むアジェンダは,はじめは伏せられていて正体がわかりません。ランが開始されると,もっとも外側のアイスから順に活性化するかどうか決定していきます。活性化すると,個々のアイスカードに記載されているサブルーチンと呼ばれる効果を順に判定します。ランナーは個々のサブルーチンの効果を敢えて受けるか,あるいは手持ちのプログラムでブレークするかを決定します。この手順は,いかにもコンピューター・プログラムライクで,サイバーパンクを題材とするカードゲームにふさわしいでしょう。
ネットランナーのアイス
アイスには,コードゲート,ウォール,セントリーという3つの種類があり,それぞれ性格が異なります。

いちばん左はコードゲートの見本で,その中でも原始的な「フィルター」です。単純な暗証番号チェックに相当するもので本気で侵入してくるランナーにとっては手間以上のものではないでしょう。

次のものはウォールの見本で「クリスタルウォール」です。ウォールやコードゲートは静的なプログラムで,侵入してきたランナーを追尾したりする動的な機能を持っていませんが,単に侵入者をチェックして入れないようにするコードゲートと比較して,ウォールはランナーにダメージを与えたりするような積極防御の機能を持っています。

いちばん右はセントリーの見本で「ボルタークラスター」です。セントリーは番人という意味で,能動的にランナーを攻撃する機能を持っています。このボルタークラスターはイラストの通りの対空砲的なイメージのプログラムで,非常に攻撃的でかつ次段階のアイスと連動した機能を発揮します。

このようなアイスを見ると,ランナー側は相当に大変そうに思えますが,コーポ側にも大きな弱みがあります。ランナー側のランは,コーポが場札としてインストールしたアジェンダだけではなく,コーポの手札(HQ)自体や,山札(R&D)自体,さらには捨て札(アーカイブ)の山ににも仕掛けられるのです。場所によりランが成功した場合の効果は若干異なりますが,アイスによるセキュリティの仕方や,ランナーのランの手順は同様に扱われます。

このため,ランナー側は状況を睨んでどこへランを掛けるかを選択できます。このため,コーポ側はどこを重視してどうセキュリティを確保していくかに知恵を絞らねばなりません。こうした場札,手札,山札,捨て札のすべてが連動している感覚も,「ネットランナー」を斬新にしており,いかにもサイバーなゲームにしています。

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ネットランナーの難点

 もう一つ「ネットランナー」には大きな特徴があります。それはシークエンスの自由度です。たとえば,ランナー側は,原則として1ターンに4アクションを実行できるとだけ決まっています。このアクションの一つとして,ドローを選択すれば山札からカードをドローでき,ランを選択すればランが実行できるようになっています。また,ネットランナーでは,様々な要素を兌換するためにビットと呼ばれる通貨のようなものが利用されます。このビットも,1アクションを使うことで,1ビットをバンクから獲得することができるようになっています。

 したがって,4アクションすべてをドローにしてしまえば,1ターンに4枚カードを引くこともできますし,逆にまったく選択せずに一切引かないこともできます。ビットについても同様です。そのため,これまでのカードゲームよりも,諸要素の兌換性が強くなっており,結果としてコスト意識がきわめて強くプレイに出てくるゲームになっています。

 このため,ネットランナーでは,プレイヤーはまったくタイプの異なるカードのパフォーマンスを共通に評価する物差しの存在を強く意識します。結果として,カード間の強弱のばらつきは,他のトレーディングカードゲームより小さくなっています。プレイでは,これらをフローさせることで,相手より高い効率を生み出すことを指向することになります。 この効果により,「ネットランナー」は計算感覚の強いゲームになっています。これは,題材とマッチングしていると思うのですが,難点でもあります。

具体的には,腕の良いプレイヤーに対して初心者が勝つのが非常に難しいゲームになっています。また,綿密なプレイにより,きちんとカードプレイのフローをパフォーマンス良く実施しなければならないので,緊張感が強いゲームになっています。このため,気軽にプレイしにくゲームになっていることは否定できません。

しかし,「ネットランナー」は,トレーディングカードゲームのみならず広くカードゲーム全体の枠で見ても,斬新な要素を満載した魅力的なゲームです。しかも,それらが非常に良く整理されてパッキングされています。ですから,興味のある方は是非とも見ておいて欲しいゲームであるのは確かです。
プロテウス
最後にトレーディングカードゲームならではの話題として,拡張キットの存在について触れておきます。「プロテウス」という拡張キットが最初で,どうやら最後になりそうです。

この理由は,本体がゲームとして完成度が高すぎるからではないかという気がします。「ネットランナー」の識者の意見では,「プロテウス」の登場で出るべきカードは出尽くしたのではないかとのことです。

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関連ゲーム / 類似ゲーム

ガーフィールドは,同じWizards of the Coast の「マジック ザ ギャザリング」でトレーディングカードゲームというサブジャンルを創出した鬼才です。

同じWotCの
「ロボラリー」というロボットプログラミングをするボードゲームや,「フィルシーリッチ」というネット上のショップビジネスゲームも彼の手によります。

90年代を代表するゲームデザイナーの一人であることは疑いありません。

ほかのサイバーパンクな感覚に満ちたゲームとしては,Game Fix の
「サイバーノート」があります。単なるモチーフとしてだけでなく,ゲームシステム自体がサイバーパンクを感じさせるという意味では「ネットランナー」と双璧を成す存在と思います。

それ以外では,Imagineering Design の「エッジシティ」がサイバーパンク版遍歴スゴロクともいうべき存在です。

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