ステラー・コンクエスト
Steller Conquest / AH
ショートコメント
●銀河帝国建設系のいわゆる4Xゲームの古典的な代表作品
one of the most popular galactic empire building game, as to say 4 X game (explore, expand, exploit, exterminate)
published designed players time
1984 Howard Thompson 2-4 4+ hours
4Xゲームの古典

 銀河帝国を建設するタイプのゲームとしては、俗に4Xゲームと呼ばれるサブジャンルがあります。4つのXとは、「explore, expand, exploit, exterminate」だそうです。探検し、拡張し、開発し、根絶するということになります。いささか類型化が過ぎる気もしますが、それなりにポイントを押さえたネーミングです。
 AHの「ステラコンクエスト」は、このサブジャンルの古典的な存在です。
 オリジナルはメタゲーミングで、この評判が良かったことからAHでデベロップしてボックスゲームとして発売されました。
 ゲームシステムの中心となるのは、星系探索と、経済の拡大です。このゲームのマップには表面温度ごとに色分けされた恒星が散在しています。プレイヤーはボードの四隅から進入して探索を開始します。
 恒星の表面温度のカラーリングごとに固有のカードデックが用意されており、プレイヤーの探査船が到着すると星系の状態を示すカードを見ることができます。そこには、植民可能な惑星がいくつあるか、その肥沃さの度合いや、最大居住可能人口はどうかなどの情報が示されています。
 表面温度のカラーリングにはスペクトル的な意味があって、居住しやすいのは太陽と同じような黄色の恒星系が一番確率が高くなっています。鉱物資源を求めるならむしろ青の恒星系が良いようになっています。
 適当な恒星系が見つかると植民者を下ろしてコロニーを構築します。居住環境が良ければコロニーは順調に自己発展をしていくようになりますが、環境が悪いようだと経済の拡大のために人を別の肥沃なコロニーから送り込む必要があるかも知れません。
ファイナル・コメント
 ジャンルを切り開いた古典への尊敬を籠めた上でいくつか苦言を呈しておきましょう。
 ゲームとしてプレイしやすさを工夫すると言うことがあまり重視されていなかった時代のゲームですので、プレイアビリティにはいくつかの難点があります。
 先ずプレイ時間が長めです。開拓から始まる都合で展開がスローであることや、序盤は多人数ソロプレイに近いことが、特に長さを感じさせます。
 また、秘匿情報の多いゲームなので、各自がルールをきちんと理解していてフェアプレイでしっかり運用できるということが前提となります。
 さらに、拡大再生産型のゲームの常ですが、序盤でショボい星系ばかりに出会うとかなり厳しくなります。マルチでは先行しているトップを皆が叩いてバランスしてくるのですが、秘匿情報系なので、そういう要素が働きません。展開が悪くてもポーカーフェイスでプレイし続け、感想戦でグチを言うくらいしか打つ手がありません。
 ルールを学習して一生懸命準備しながら、ショボい星系ばかり引いてガックリ来てしまい、その失望を隠しながら長時間プレイし続けるのはなかなか辛いものがあります。
 とは言え、これは秘密情報系の醍醐味とトレードオフになっている要素なので、全てがオープンであるマルチにはない面白みを感じてもらえれば良いのですが。
関連ゲーム
●トワイライトインペリウム
●スターフォール
銀河帝国の興亡
●スローンワールド
銀河大戦記
●ゲイトウェイトゥザスターズ
 この「ステラコンケスト」が面白い理由の一つに、こうした情報が実際にその星系に行ったプレイヤーの間でしか交換されないことがあります。このため、隣の芝生は青く見える疑心暗鬼や、自分のプランの進捗を他のプレイヤーに気取られないようにする駆け引きが重要になります。
 こうした情報の秘匿性と、その結果としての多人数ソロプレイ的な中盤までの進行は、むしろ現在ではボードゲームでプレイするよりはコンピューターゲームやオンラインゲームで、もっとエキサイティングに楽しむことができるものになっています。けれども、そうしたコンピューターゲームやオンラインゲームの祖先に当るのが「ステラコンケスト」なのです。
 経済基盤の発展とともに、それによって実施できる技術開発がゲームの重要な味付けになっています。この要素は、メタゲーミングの十八番と言っても良いかも知れません。
この「ステラコンケスト」では技術は3つのカテゴリーに分かれています。分かりやすいものは航行速度の研究です。このゲームでは宇宙船の初期速度は2ヘクス/ターンなのですが、開発していくことでどんどん速くなり8ヘクス/ターンまで1ヘクスずつ上げて行くことができます。これはそのまま探索や植民のスピードアップに直結していくので重要です。
次に武器の研究があります。これによって星系を守るためのミサイルベースや、攻撃力が高い宇宙船であるファイターシップが作れるようになります。さらに進むと、デススターや、プラネットシールドというような強力なものが作れるようになっていきます。各プレイヤーの版図が広がって接触するようになると武力行動が発生し、こうした要素が重要度を増して行きます。
最後のテクノロジーの研究は、経済システムの拡大限界を拡張するものになります。このゲームでは基本的にはコロニーの人口が生産力になります。しかし、惑星には肥沃さの度合いがあり、最大居住可能人口が設定されています。
テクノロジーの研究では荒涼とした惑星での生活環境を上げたり、人口規模を上回る生産能力をもたらす工業技術を築いたりできるのです。
 こうした適度なガジェットを利用しながら、プレイヤーは探索、拡張、開発をしていきます。そして、互いの版図が激突してからは4Xの最後の一つ「根絶」を目指して敵のコロニーへの攻撃を開始することになります。
「ステラコンケスト」はこのタイプのゲームの原典とも言うべき存在で、ルールの書き方などに古さを感じますが、複雑すぎずボードでプレイしやすい範囲にまとまっています。ジャンルを切り開いた傑作ゲームだと思います。