フリーダム イン ザ ギャラクシー
Freedom in the Galaxy / SPI / AH
一言で言えば‥‥
SFゲームの歴史に残るであろう代表的古典作品
銀河帝国の圧制に苦しむ人々は,ついに立ち上がるのであった
こんなゲーマーにお薦めしたい
スターウォーズの戦局全体をプレイしたいと夢見る方に
個人の活躍から艦隊戦,部隊戦まで銀河狭しと戦いたい方に
プレイ人数 |
2人 |
プレイ時間 |
シナリオ:1−4時間,大銀河戦:12−20時間
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ルール難度 |
上級ウォーゲーム,しかも独創的 |
デザイナー |
ハワード バラシュ, ジョン バターフィールド |
入手状況 |
海外ゲームショップを当たられたし |
もうひとつのスターウォーズ
「フリーダムインザギャラクシー」は,SPI社から出版され,その後,AH社が版権を購入して再出版したゲームです。日本でも翻訳ルールが添付されて発売されました。
このゲームは,映画「スターウォーズ」の影響を強く受けたゲームで,一説には版権を取ることができなかったために「スターウォーズ」になり損ねてオリジナルの設定を持つゲームとなったのだと言われています。
紀元5764年,圧制に苦しむ銀河の人々は,銀河帝国へと叛旗を翻すことになるのです。
反乱は個人の活動から開始され,各星系の各惑星の蜂起への意思を高めるところからスタートします。機が熟して,武装蜂起が発生すると部隊コマが登場し,鎮圧にやってくる帝国の部隊と衝突します。武装蜂起が度重なると反乱軍の秘密兵力も充実し,ついに決戦の日へと‥‥。
フリーダムインザギャラクシーのシステム
フリーダムインザギャラクシーは,映画「スターウォーズ」のような銀河帝国への反乱に立ちあがる人々の活躍と,部隊の戦闘の双方を同時に描いています。このため,かなり独創的なゲームシステムを採用しています。
右の画像は,帝国の帝宮が存在する惑星オルログを含んだオシリウス星系です。中央が恒星オシリウスを表しており,その周囲に同心円状に描かれているのがこれを回る居住可能惑星です。それぞれのホイール状の惑星には,その惑星の軌道上を示すエリア,その惑星の状態(政治的立場と,軌道上の防衛システム)を表す表示エリア,惑星上の地域を示すいくつかの地形エリアが描かれています。
さらに各地形エリアには,その地形の性状を示すアイコンと,その地形の規模を表す数字,そこに住む主要な種族(この時代,銀河の住人は人類だけではありません),その土地で遭遇する生物(様々な奇怪な生物が銀河にはいます)が記載されています。
こうした極めて特殊なマップを使用して,ある時は個人の活躍を描き,ある時は部隊戦闘を実施するのです。このため,ルールは類がないものとなり,また分量的にもかなりのものです。
これを緩和する意図で,規模の小さい練習シナリオがあるのですが,これがあまり良くありません。本番である銀河戦役ゲームでは,練習シナリオで覚えたルールの一部を変更するため,一度おぼえたことを忘れたりしなければならず,どうもすっきりしません。
しからば,いきなり銀河戦役をというのも無理があります。銀河に分散して存在している様々な帝国の秘密施設や,それぞれの惑星に住む生物など豊富というのを通り越して膨大と言って良いほどのガジェットが盛り込まれていて,かなり手強いのです。
ということで,「スターウォーズ」という魅力的な題材から派生していて,とても興味深いゲームであるにも関わらずおよそ万人向けとは言えません。
と,ここまで脅した上で,それでもここまで読み進められている方にお薦めするのですが,そうしたハードルを乗り越えてプレイする価値のあるゲームと思います。豊富なガジェットも最初は使いこなせずに戸惑うかも知れませんが,熟知してくるとプレイの負荷を感じるよりもプレイの楽しさを感じさせてくれるものとなります。様々な存在の中には愛着を感じるものや,因縁を感じるものなども出てきて,いろいろな思い入れを持ってプレイできるでしょう。
映画「スターウォーズ」の一連のシリーズが,あの戦役の一部しかカメラに捉えていなかったとするならば,このゲームはその全貌を捉えており,それ相応のガジェットを持っているのです。そして,そのことは最初のハードルさえ越えてしまえば,このゲームの魅力でこそあれ,欠点ではないと思います。
帝国に叛旗を翻した英雄たち
いちばん左は,レイナー ダーバンです。かつての帝国騎士団の長でありながら,陰謀に陥れられて帝国の中枢から姿を消した人物です。彼は政治的な手腕と軍事指導者としての資質をも合わせ持ち,もちろん騎士として一人の戦士として優れてもいる人物です。反乱軍の主導的な役割を果たすことになるでしょう。帝国はもちろん彼をマークすることになりますが,彼を倒すことは帝国の強大な力をもってしても容易ではありません。
その隣は,ジーナ アドーラ姫です。惑星アダーレの女王でありながら民衆の立場に立ってその座を追われた彼女は反乱軍のシンボル的存在です。
その次は,アダム スターライト青年です。彼は平凡な青年でありえた存在でしたが,家族を帝国により奪われたことで彼の人生は一変しました。誰よりも帝国を憎む彼は,反乱軍の勇気ある青年戦士としてゲームに登場してくることでしょう(彼は初期配置されず,反乱軍の人材集めの過程で登場してきます)。
最後の一人はボッカネグラです。彼は帝国外の宙域を探検し貿易する宇宙海賊の出身で,本来は愛機プラネタリープライベーターを操って組織に縛られぬ孤高の宇宙船乗りです。しかし,宇宙海賊仲間が帝国の重税に反発して討たれて行く中,反乱軍に組して帝国と戦うことを決意したのです。
言ってみれば,彼らは,オビワン ケノビであり,レイア姫であり,ルークであり,ハン ソロであると言えます。それぞれの境遇設定は子細に見れば違っていますが,映画「スターウォーズ」を投影してこのゲームをプレイするには十分な存在たちでしょう。
反乱軍のキャラは,総勢20名で,このほかにも種々雑多なキャラクターが登場してきます。それは映画「スターウォーズ」では描ききれなかったそれぞれの帝国との戦いを戦った人たちにも相当する存在です。
皇帝と,その忠臣,逆臣たち
かわって帝国側のキャラクターです。
いちばん左は,コレグヤ皇帝です。政治にも軍事にも関心もなければ才能もない贅沢放蕩に溺れる存在です。帝国の腐敗を象徴するような彼ですが,それでもその血筋を尊ぶものもまだまだいます。
その隣は,皇帝の娘であるサイザ キンボです。彼女は皇帝の娘ですが,父である皇帝を尊敬など少しもしていません。彼女は皇帝が早く死んで自分が女帝となる日を夢見ています。
その次は,帝国軍総帥バルカ大将です。厳格で忠誠心に厚い彼は帝国の旗を是とし,これに背くものを強く憎んでいます。彼が帝国の最後の栄光とともに滅びるのか,それとも人々の希望を頑迷な忠誠心で粉砕する存在となるのかが帝国を指揮するプレイヤーにとっての最大の争点となることでしょう。
最後の一人は,現在の帝国騎士団の長であるレッドジャックです。レイナー ダーバンを陰謀により追い落としてその地位についた彼は,次には皇帝の地位を狙っているとも言われます。しかし,その陰謀も帝国あってのことであり,反乱軍の意図を粉砕する立場であることは他の帝国キャラクターと変わるところはありません。
映画「スターウォーズ」と異なり,このゲームでは帝国側を指揮するプレイヤーもいるため,帝国側の視点でもこの反乱を見ることができます。帝国は腐敗していますが,それでもなお強大な組織であり,その各所には能力の高いもの,志を持つものもいます。むしろ,単純に帝国への不満という点で共通している反乱軍よりも,帝国軍のキャラクターたちはもっと多様な動機を持っており,その集団は複雑な利害関係で結ばれています。そのため,「袖擦り合うも他生の縁」と言うべき反乱軍よりも,むしろ物語的には魅惑的な集団とさえ言えるかもしれません。
プレイバランスの難点と,一つの提案
上述した通り,このゲームのひとつの難点は,とっつきにくさです。
ですが,もうひとつ難点があります。それは,プライバランスが,かなり反乱軍にとって苦しいということです。
わたしは4−5回ほど銀河戦役に取り組みましたが,これまで一度として反乱軍が十分に力を得て帝国部隊と継続的な軍事行動を実施できる規模に達したことがありません。
むしろ,そこまで行く前にいくつかのゲリラ活動チームの段階で,帝国の追撃隊や,街のならずもの,奇怪な現住生物などに襲われて志半ばにして力尽きてしまうのです。
このゲームは,その設定の性格上,反乱軍が動き出してこそゲームが活発化していきます。そのため,反乱が早期にしぼんでしまうと,いささか消化不良な印象が残ります。
そこで,一つの提案として,ゲームの初期設定を大幅に反乱軍よりにシフトしてスタートすることがパソコン通信での議論で提案されました。このゲームでは,各惑星の初期政治姿勢を示してあるのですが,同時に練習シナリオ用に「反乱軍が一斉蜂起するクライマックス時点での政治姿勢」が各惑星に設定されています。そこで,このクライマックスでの政治姿勢を使ってゲームをスタートするのです。
実際にはこの時点では既に蜂起して反乱軍が支配されている惑星もありますが,これらについては反乱寸前の姿勢とどめて置くという意見と,指示通りに反乱軍支配にしてしまうという意見があります。どちらを取るかは,プレイする方の好みでしょう。また,あくまでオリジナルの設定で反乱に挑むという考え方も,もちろんあるでしょう。
いずれにせよ,銀河の未来を決めるのは,プレイヤーの手に委ねられています。
関連ゲーム / 類似ゲーム
映画「スターウォーズ」のゲームは,版権をとったウェストエンド社からスターウォリアー,ホス強襲,エスケープフロムデススター, エンドアの戦いが出ています。「スターウォーズ」は人気があるので,このほかにもゲームは出ており,またこれからも新たに出てくることでしょう。
帝国に対する反乱というシチューエーションのSFゲームとしては,GDWのブラッドツリーレベリオンなどがあります。
また、もっと手軽にできるフリーダムインザギャラクシーが欲しいと思って自作してみたのがアウターリム動乱です。もっともできてみたらだいぶん違う気もしますが。